李在明大統領、NATOで「防衛産業パートナーシップ2.0」を提案――何を発表し、なぜ重要なのか

ウクライナ戦争の長期化を受け、NATOは予想をはるかに上回る深刻な問題に直面しています。最先端兵器を開発する能力以上に、砲弾やミサイル、自走砲といった目下必要な装備を十分に生産できない「生産能力の不足」が、新たな安全保障上の課題として浮上したのです。
こうした状況を踏まえ、李在明大統領はNATOとの防衛産業協力に向けた新たな方向性を示しました。韓国製兵器を単に販売する段階を超え、韓国と欧州がともに研究し、開発し、生産する「韓・NATO防衛産業パートナーシップ2.0」を提案したのです。
今回の提案は、単なる外交的な表明ではありません。すでにハンファ・エアロスペースをはじめとする韓国の防衛産業企業が進めている欧州現地化戦略とも合致しており、大きな関心を集めています。
単なる兵器輸出から産業同盟へ
これまで韓国の防衛産業輸出は、完成した兵器を海外に販売する形が中心でした。
代表例として、K9自走砲やK2戦車、天舞(K239)多連装ロケットシステムなどが韓国で生産され、海外に供給されてきました。
しかし、ロシア・ウクライナ戦争以降、欧州諸国の考え方は大きく変わりました。
戦争が長期化するほど、兵器を購入するだけでは不十分だったのです。戦時中も生産や修理を続け、部品を供給できる自国の産業基盤が必要になりました。
李在明大統領が提案した「防衛産業パートナーシップ2.0」も、まさにこうした変化を見据えたものです。
その柱は次の通りです。
- 共同研究(R&D)
- 共同開発
- 共同生産
- 技術移転
- 長期的な産業協力
- 維持整備および後方支援体制の構築
つまり、韓国は兵器を販売する国にとどまらず、欧州の防衛産業エコシステムの一員になることを目指しているのです。

なぜ今、この提案なのか
ウクライナ戦争は、欧州の防衛産業が抱える弱点を露呈させました。
155ミリ砲弾をはじめ、ロケットモーター、推進薬、ミサイル部品、防空迎撃ミサイルに至るまで、主要兵器のほぼすべてで、生産量が戦時の消費ペースに追いつきませんでした。
冷戦終結後、欧州の大半の国は軍需産業の規模を大幅に縮小してきました。
一方、韓国は北朝鮮との軍事的緊張が続いてきたため、大規模な生産設備と製造能力を維持してきました。
そのため韓国は、比較的短期間で大量生産が可能な国と評価されています。
NATOにとっても韓国は、不足する生産能力を補完できる極めて重要な協力相手となったのです。
ハンファ・エアロスペースの戦略とも完全に一致
李在明大統領の構想は、ハンファ・エアロスペースがすでに進めている戦略とも一致しています。
ハンファは最近、「欧州とともに、欧州のために」という新たな戦略を打ち出しました。
韓国で製造した兵器を輸出する従来の方式ではなく、欧州域内に生産施設や整備センターを整備する取り組みです。
代表的な事例がポーランドです。
ポーランドは最大672門のK9自走砲を導入する過程で、単なる購入国から、部品生産や整備、技術移転まで含む産業協力の段階へと進みつつあります。
ルーマニアでも、K9自走砲とK10弾薬運搬車の導入に合わせ、現地生産拠点となるH-ACE Europeの整備が進められています。
今後は、北欧諸国や西欧にもこうした生産ネットワークを広げる計画です。
天舞ミサイルも欧州で生産へ
もう一つ注目されるのが、天舞(K239)多連装ロケットシステムです。
ハンファは現在、ポーランドでミサイル生産施設を整備する計画も進めています。
これは発射機を販売するだけでなく、ロケット弾や誘導弾まで欧州域内で生産する体制を構築する取り組みです。
ノルウェーをはじめ、今後、天舞を運用する国が増えれば、すべての弾薬を韓国から輸出するのではなく、欧州域内で生産・供給できるようになります。
NATOが最も不足しているとみているミサイル・弾薬のサプライチェーン問題の解決にも、重要な役割を果たすと期待されています。
韓国防衛産業の立ち位置が変わる
今回の提案が持つ最大の意味は、韓国防衛産業の役割が変わることです。
これまで韓国は兵器を輸出する国でしたが、今後はNATOとともに将来の兵器を設計・生産する産業パートナーを目指すことになります。
これは、短期契約を中心とした防衛産業輸出から脱却し、数十年にわたって維持される共同生産体制やサプライチェーンに参加できることも意味します。
実際、NATOは近年、防衛生産能力の拡大を最優先課題に掲げており、欧州各国も現地生産や技術移転を含む協力を積極的に求めています。
韓国はすでにK9自走砲、K2戦車、天舞多連装ロケット、各種誘導兵器、航空宇宙技術など幅広い分野で競争力を確立しており、こうした流れの中で戦略的重要性はさらに高まっています。
今回の発表をめぐる核心
今回の李在明大統領によるNATOへの提案は、単なる防衛産業輸出の拡大策ではありません。
核心にあるのは、韓国をNATOの防衛産業サプライチェーンに長期的な構成員として組み込む戦略です。
その方向性は、大きく三つに整理できます。
- 韓国の大規模な生産能力を活用し、緊急の軍需を迅速に支援する。
- ポーランドとルーマニアを中心に、欧州域内の生産・整備拠点を拡大する。
- 共同研究、共同開発、共同生産を基盤とする「韓・NATO防衛産業パートナーシップ2.0」を構築する。
ウクライナ戦争後、国際安全保障環境が大きく変化する中、今回の提案は、韓国防衛産業が単なる兵器輸出国を超え、NATOの長期的な産業パートナーとして定着を目指す新戦略の出発点であるという点で、大きな意味を持つと評価されています。
FAQ
李在明大統領が提案した「韓・NATO防衛産業パートナーシップ2.0」とは?
「韓・NATO防衛産業パートナーシップ2.0」とは、従来の兵器輸出中心の協力を超え、韓国とNATO加盟国が共同研究、共同開発、共同生産、技術移転、維持整備までをともに進める長期的な防衛産業協力モデルです。韓国の防衛産業企業が欧州の防衛産業エコシステムに、より深く関与することを目指しています。
NATOが韓国との防衛産業協力を拡大しようとする理由は?
ウクライナ戦争の長期化により、欧州は弾薬やミサイル、自走砲など主要な防衛装備の生産能力が不足する問題に直面しました。一方、韓国は大量生産能力と短納期を実現する競争力を備えており、NATOのサプライチェーンを補完できる重要なパートナーとして注目されています。
ハンファ・エアロスペースの欧州現地化戦略とは?
ハンファ・エアロスペースは「欧州とともに、欧州のために」という戦略の下、ポーランドやルーマニアを中心に現地生産施設と維持整備体制を構築しています。単に兵器を輸出するのではなく、現地組み立て、技術移転、部品生産を拡大し、欧州の防衛産業サプライチェーンの一部となることが目標です。
K9自走砲と天舞の事業は今後どう変わるのか?
K9自走砲はポーランドとルーマニアを中心に現地生産と維持整備の比重が高まっており、K239天舞についても、欧州にミサイル生産施設を整備する案が進められています。これにより欧州の運用国は、装備や弾薬をより安定的に調達できる体制を整えられる見通しです。
今回の提案は韓国の防衛産業にとって何を意味するのか?
今回の提案は、韓国防衛産業が単なる兵器輸出国を超え、NATOの共同研究や共同生産に参加する戦略的な産業パートナーへ飛躍することを意味します。長期的には、欧州の防衛産業サプライチェーンに安定的に加わり、世界の防衛市場で影響力を拡大する契機になると期待されています。