運動はどのくらいが適切? 専門家のアドバイスから考える実践的な目安

運動を始めようと思ったとき、まず頭を悩ませるのが、次のような疑問です。
「どのくらいやればいいの?」毎日取り組むべきなのか、ジムで何セットこなせばいいのか、1日に何歩歩けばいいのか。明確な目安がないまま、ただ「頑張る」だけでは、いつの間にか疲れ果ててやめてしまったり、反対に運動量が少なすぎて効果を実感できなかったりすることがあります。
医療分野の分析という観点から見ると、運動量については世界保健機関(WHO)や各国の保健当局が示す明確なガイドラインがあります。そこに、トレーナーが現場で培ってきた実践的な基準が加わります。
今回は、どのくらい運動すればよいのかについて、有酸素運動、筋力トレーニング、ウォーキング、運動強度、そしてやりすぎの目安まで、専門家のアドバイスを中心に整理します。

1. 有酸素運動は週にどのくらい必要?
公式ガイドライン
世界保健機関(WHO)は、18~64歳の成人に対し、週150分以上の中強度の有酸素運動、または週75分以上の高強度の有酸素運動を推奨しています。
韓国の保健福祉部と韓国健康増進開発院が発表した身体活動指針もこれを基本とし、成人には中強度の身体活動を週150~300分、または高強度の身体活動を週75~150分行うよう勧告しています。
これは、1日約30分の運動を週5日行うのと同程度の運動量です。
ただし、この基準を半分しか満たせなかったとしても、まったく運動しないよりははるかに良いという点が重要です。
韓国国内でこの基準を実践している人の割合が半分にも満たない一方、世界全体の平均実践率は70%を超えるという調査結果は、最低限の基準さえ満たせていない人がどれほど多いかを示しています。
運動強度はどう判断する?
専門家は、運動強度を数字ではなく、体の反応から判断する方法を勧めています。
低強度の運動は呼吸のリズムが大きく変わらず、歌を歌える程度です。中強度になると会話はできますが、歌うのは難しくなります。
高強度の運動とは、会話をすることさえ難しい状態を指します。ジムのトレーナーが初心者のランニングマシンの速度を調整するときにも、「隣の人と軽く会話はできるが、歌うことはできない程度」という目安がよく使われます。
心拍数を使ってより正確に測定したい場合は、カルボーネン法を利用できます。目標心拍数は、(最大心拍数220-年齢-安静時心拍数)×運動強度(%)+安静時心拍数で算出します。
2. 筋力トレーニングは週に何回が適切?
頻度とセット数の目安
世界保健機関(WHO)と韓国の指針は、いずれも筋力トレーニングを週2回以上行うことを共通して推奨しています。
ある研究で高齢者を対象にWHOの身体活動基準を満たしているか分析したところ、有酸素運動だけでは糖尿病の有病率に有意な差は見られませんでした。一方、週2回以上筋力トレーニングを行っていたグループは、行っていないグループに比べて糖尿病の有病率が29%低くなっていました。
セット数については、トレーナーの間では1つの筋群につき週10~20セット程度が一般的な目安とされています。
運動初心者は、回復力やフォームの習熟度を考慮し、まずは週10セット前後から始め、経験を積むにつれて徐々にセット数を増やしていく方法が勧められます。
初心者が無理なく始める目安
トレーナー歴8年の専門家たちが共通して勧める初心者向けのルーティンは、筋力トレーニングを週2~3回、有酸素運動を週3~5回行うというものです。
種目は1日3~5種類に絞り、1種目につき3~4セットを集中して行うと、けがのリスクを抑えながら十分な刺激を与えられる、バランスの取れた運動量になります。
重量は、1回で持ち上げられる最大重量の60~80%を目安にすると、自然に6~15回繰り返せる範囲に収まります。
同じ部位を毎日鍛えるよりも、部位ごとに48~72時間の休息を設けたほうが、筋肉の回復と成長には効果的だという点も、多くの専門家が共通して強調しています。

3. ウォーキングは1日何歩が適切?
「1日1万歩」の真実
「1日1万歩」という目標は、実は科学的な根拠から生まれたものではありません。1964年の東京オリンピックを前に、日本で万歩計を販売するために打ち出されたマーケティング戦略が始まりだとされています。
近年の研究では、1万歩より少ない歩数でも十分な健康効果が得られることが相次いで示されています。
米国のマサチューセッツ大学アマースト校の研究チームが、4大陸に暮らす4万7471人を分析した結果、1日6000~8000歩歩くだけでも、60歳以上の成人の早期死亡リスクが大幅に低下することが分かりました。
また、オーストラリアのシドニー大学の研究チームが10か国以上で行われた57件の研究を分析したところ、1日7000歩歩くことで早期死亡リスクを最大47%低下させることができました。これは1万歩歩いた場合の効果(48%)と大きな差がありませんでした。
普段あまり歩かない人ほど効果が大きい
ポーランドのウッチ医科大学の研究チームが、22万6889人を対象とした17件の研究を分析した結果、1日2337歩歩くと心血管疾患による死亡リスクが低下し始め、そこから500歩増えるごとにリスクが7%ずつ低下することが分かりました。
歩数が多いほど効果が高いことも確認されましたが、重要なのは、普段あまり体を動かさない人ほど、少し歩数を増やすだけで大きな効果を得られるという点です。
現在ほとんど歩いていない人は、いきなり1万歩を目標にするよりも、まずは6000~7000歩を目指して始めるほうが、現実的で続けやすい方法です。
4. 過ぎたるは及ばざるがごとし。運動のしすぎは逆効果
オーバートレーニングのサイン
運動量を増やせば、必ずしも結果が良くなるわけではありません。
ジムで週4回以上、自分の限界に挑む高強度トレーニングを続けていると、体の回復力を超えてしまい、いわゆるオーバートレーニングの状態に陥ることがあります。
米国バージニア大学医学部の整形外科教授は、「体が発する警告サインを決して軽視してはいけない」と助言しています。
代表的な警告サインには、運動強度を上げていないにもかかわらず新たな筋肉痛が10~14日以内に治まらない、複数の部位でけがを繰り返す、睡眠障害や気分の落ち込み、運動意欲の低下、食欲不振などがあります。女性の場合は、月経周期の乱れもオーバートレーニングのサインかもしれません。
回復もトレーニングの一部
トレーナーは、オーバートレーニングを避けるからといって、週5日以上トレーニングしてはいけないわけではないと説明しています。
ただし、同じ部位を無理に毎日鍛えるのは避け、部位ごとに少なくとも48~72時間の休息を設けるよう、プログラムを調整する必要があります。
韓国では、20~30代の10人に2人がオーバートレーニング症候群を経験しているという調査結果もあります。特に運動歴が浅い人ほど、「きついほど効果がある」という漠然とした考えから、知らず知らずのうちに無理をしやすい点には注意が必要です。
専門家は、自分の運動能力や体重、現在の身体状態を考慮した運動メニューを組むために、専門コーチの助けを借りることを勧めています。

結局のところ、強度よりも継続が大切
有酸素運動でも筋力トレーニングでもウォーキングでも、専門家のアドバイスに共通する原則があります。
一度に完璧な運動量をこなそうとするよりも、今より少し多く体を動かすことから始め、それを継続するほうがはるかに重要だということです。
WHOが示す最低基準を完全に満たせなくても、まったく運動しないより、少しでも体を動かすほうが健康に良いことを、複数の研究が共通して示しています。
体が発するサインに耳を傾けることも大切です。
筋肉痛が2週間近く治まらなかったり、けがを繰り返したりするなら、それはもっと頑張るべきだというサインではなく、しばらく休むべきだというサインです。
よくある質問(FAQ)
Q1. まったく運動していなかった人は、どこから始めればいいですか?
最初からWHOの推奨量をすべてこなそうとせず、まずは1日6000歩程度のウォーキングから始めるのが現実的です。
普段あまり体を動かしていなかった人ほど、少し動くだけでも大きな健康効果を得られるという研究結果があります。無理なく始め、徐々に強度と時間を増やしていくとよいでしょう。
Q2. 筋力トレーニングと有酸素運動では、どちらが重要ですか?
目的によって異なります。ただし、ある研究では、有酸素運動だけでは糖尿病の有病率に有意な差が見られなかった一方、週2回以上筋力トレーニングを組み合わせたグループでは、糖尿病の有病率が29%低くなりました。
WHOも有酸素運動に加えて週2回以上の筋力トレーニングを行うよう推奨しているため、どちらか一方を選ぶより、両方に取り組むのが理想的です。
Q3. 毎日運動しても大丈夫ですか?
週5日以上運動すること自体は問題ありませんが、同じ部位を毎日高強度で鍛えるのは避けるべきです。
部位ごとに少なくとも48~72時間の休息を設けたほうが、回復と筋肉の成長には効果的です。
毎日運動したい場合は、部位を分けて、ある日は上半身、翌日は下半身や有酸素運動というように組み立てると安全です。
Q4. ジムでは何セット行えばいいですか?
運動初心者なら、1つの筋群につき週10セット前後、1種目につき3~5セット程度が現実的な目安です。
運動経験を積んだら、徐々に週20セット前後まで増やしていくこともできます。
ただし、セット数よりも大切なのは継続です。最初から無理をして、多くのセットをこなそうとしないようにしましょう。
Q5. 筋肉痛が続いていても、運動したほうがいいですか?
筋肉痛が72時間を超えて続く場合は、痛みが治まるまで、その部位のトレーニングを休むのがよいでしょう。
この状態で運動を続けると、十分に回復していないため、けがのリスクが高まります。新たな筋肉痛が10~14日たっても治まらない場合は、単なる筋肉痛ではない可能性もあるため、専門家に相談することを勧めます。