グリペン戦闘機が再び注目される理由
最近、世界各国の戦闘機導入計画で、スウェーデンのSaab Gripen E(グリペン)戦闘機が再び強い存在感を示しています。
これまでしばらくは、5世代ステルス戦闘機F-35 Lightning IIに関心が集まっていました。しかし最近では、実際の運用に適した戦闘機として評価され、複数の国がグリペンの導入や追加購入を検討しています。
代表的な例がブラジルとカナダです。ブラジルは既存の36機の契約に加え、さらにグリペンE/Fを20機導入する計画を進めています。カナダもF-35と合わせ、最大72機規模のグリペンを混成運用する案を検討しています。
ご存じのように、グリペンはタイなど一部の国には販売されたものの、長い間、導入先を増やせずにいました。
ラファールも登場後はなかなか採用されませんでしたが、ここ10年ほどで過去最高ともいえる好況を迎えています。なぜF-35は市場を席巻できず、いったんは消えかけたグリペンが再び息を吹き返しているのでしょうか。その背景を見ていきます。

運用コストが比較的低い
グリペンが注目される最大の理由は、コストパフォーマンスの高さです。
現代の戦闘機は、購入価格だけでなく、数十年にわたって発生する維持費が非常に重要になります。F-35は優れた性能を備えている一方、整備・運用体制が複雑で、コストも高いとされています。
これに対してグリペンは、比較的安価な運用コストと簡素な整備体制を特徴としています。少人数でも整備が可能で、短時間のうちに再武装と給油を完了できるため、有事にも高い稼働率を維持できます。
滑走路がなくても運用できる
グリペンの特徴の中でも、とりわけユニークなのが分散運用能力です。
スウェーデンは冷戦期、ソ連による攻撃を想定し、大規模な空軍基地が破壊されても一般道路から戦闘機を運用できるよう設計しました。
そのためグリペンは、短い滑走路や高速道路から離着陸でき、小規模な整備チームだけでも運用できます。カナダが北極圏の防衛や広大な領土の監視にグリペンを検討しているのも、まさにこの特性が理由です。
最新の電子機器と強力な兵装
価格が安いからといって、性能が劣るわけではありません。
最新型のグリペンE/Fには、次のような先進装備が搭載されています。
なかでもMeteorミサイルは、世界最高水準の空対空兵器の一つと評価されており、長距離交戦能力で大きな強みを発揮します。ブラジルはすでに実射試験にも成功しています。
国家主権の面でも有利
近年、各国がグリペンに関心を寄せるもう一つの理由が、技術移転と自国の防衛産業育成です。
ブラジルは現在、自国内でグリペンの組み立て生産を行っており、将来的には研究開発や整備・保守の技術まで獲得しようとしています。
カナダもグリペンを選択した場合、自国内での最終組み立てや整備・保守、ソフトウエア管理まで担う案を検討しています。これは米国を中心とする体制への依存度を下げ、国家としての管理権限を確保しようとする動きと見ることができます。
ドローン時代に適したプラットフォーム
現代の戦争は、単純に戦闘機同士が戦うだけの時代ではありません。
有人・無人機の連携運用(Manned-Unmanned Teaming)が、次世代の空中戦における重要な要素として浮上しています。
ブラジルが共同開発した複座型のグリペンFは、後席からドローンの管制や戦場管理、電子戦任務を行えるよう設計されています。将来の戦場で、戦闘機とドローン部隊を同時に指揮する役割まで想定したコンセプトです。
需要が急増している
最近、グリペンに関心を示している国はブラジルとカナダだけではありません。
このため現在では、むしろ生産能力が需要に追いつかない可能性まで指摘されています。今後の供給を左右する主要な要因として、エンジンとレーダーの生産能力が挙げられています。
グリペン再評価の動きが加速
グリペンが再び脚光を浴びている理由は、単に性能だけではありません。
戦闘機市場が、「最高性能だけを追求する時代」から、「実際に維持・運用できる戦力」を重視する方向へ変化しているからです。
F-35が最上位クラスのステルス戦闘機だとすれば、グリペンは比較的低い運用コスト、高い稼働率、優れた電子装備、そして大きな産業協力効果を備えた現実的な選択肢として評価されています。
結局のところ、近年のグリペン人気が示しているのは、単なる「コスパに優れた戦闘機」という評価を超え、将来の空軍が求める経済性・自立性・生存性を同時に満たすプラットフォームとして再評価されているということです。