夏のスタミナ料理5選――疲れた体を支える理由
初伏・中伏・末伏の時期が近づくと、自然と熱々のスープ料理が恋しくなります。
「以熱治熱」という言葉があるように、暑い日にあえて熱い料理を食べる習慣が長く続いてきたのは、決して偶然ではありません。
夏は汗をたくさんかくことで水分と電解質が失われやすく、暑さで食欲も落ちるため、食事量が減って栄養バランスを崩しがちです。
スタミナ料理という考え方は、単なる伝統や迷信ではありません。夏に不足しやすいたんぱく質やビタミン、ミネラルを集中的に補うための、先人の経験に基づく知恵に近いものです。今回は、夏を代表するスタミナ料理5品――サムゲタン、うなぎ、アワビ、ドジョウ汁、コングクスについて、どの栄養素がどのように働くのか、日常生活でどう取り入れるとよいのかを中心に紹介します。

1. サムゲタン
どのような効果がある?
サムゲタンの主材料である鶏肉には、良質なたんぱく質が豊富に含まれています。
たんぱく質は、筋肉や免疫細胞、酵素をつくるために欠かせない栄養素です。夏は食欲が落ちてたんぱく質が不足しやすく、疲れを感じやすくなることがあります。
鶏肉は筋肉の中に脂肪が入り込んでいないため味わいが淡白で、筋繊維も細く、消化・吸収しやすいのが特徴です。必須アミノ酸も豊富で、体力回復に役立ちます。
一緒に入っている高麗人参には、ジンセノサイドという成分が含まれています。暑さやストレスなどの環境変化に体が適応するのを助け、疲労回復や免疫機能に寄与するとされています。
また、鶏肉に豊富なビタミンB群は、炭水化物や脂質をエネルギーに変える過程で必要な栄養素で、体内のエネルギー代謝をサポートします。
なぜ熱い料理を食べるの? どう取り入れる?
「暑いのに、なぜ熱い料理を食べるのか」と疑問に思う人も多いでしょう。熱い料理を食べると一時的に発汗が促され、汗が蒸発することで体温を下げるのに役立つ場合があります。
温かい料理は胃腸の働きを促し、食欲を高める効果も期待できます。ただし、何より大切なのは料理の温度よりも、十分な栄養を取ることです。
サムゲタンは1杯で約1000kcal前後と、決して低カロリーではありません。頻繁に食べるよりも、伏日(ポンナル)のように特に体力を補いたい日に食べるほうが、バランスのよい取り入れ方といえます。
2. うなぎ
どのような効果がある?
うなぎは必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質食品です。一般的な魚に比べてビタミンAの含有量が非常に多く、活性酸素の除去や視力の保護、成長と生殖機能の維持に効果があるとされています。
特にニホンウナギには、オメガ3脂肪酸であるDHAとEPAが成人の1日推奨摂取量の2倍以上含まれています。動脈硬化や脳卒中などの循環器疾患の予防だけでなく、血管内の悪玉コレステロールや中性脂肪の値を下げるのにも役立ちます。
うなぎに含まれるアルギニンは、血管を拡張して血流を助ける働きがあるとされます。また、ビタミンEやコラーゲンは、肌の老化防止に寄与します。
どう取り入れるとよい?
うなぎは脂っこい印象からカロリーを心配されがちですが、実際には100gあたり約110kcalと、思ったほど高くありません。
ただし、たれを使って焼くとソースの分だけカロリーが大幅に増えることがあります。あっさりした塩焼きや白焼きで食べると、負担を抑えられます。
昔から、うなぎを食べた後に桃を一緒に食べると下痢を起こすことがあるといわれています。デザートを選ぶ際には覚えておくとよいでしょう。

3. アワビ
どのような効果がある?
「貝の王様」とも呼ばれるアワビには、たんぱく質に加え、ビタミンA、B1、B2、Cなどさまざまなビタミン、さらに鉄、リン、ヨウ素、亜鉛といったミネラルが豊富に含まれています。
アワビを蒸して乾燥させたとき、表面に現れる白い粉はタウリンです。コレステロールの含有量を下げ、視力の回復や血圧低下に役立つとされています。
アワビに豊富な亜鉛は、成長や生殖機能の発達に欠かせない成分で、免疫力の向上にも寄与するとされています。低脂肪・高たんぱくのアワビは体内で栄養を吸収しやすく、回復期の患者や高齢者、産後の女性のスタミナ食としても広く利用されています。
どう取り入れるとよい?
体力が落ちている人や消化力が弱っている人には、アワビ粥のように柔らかく調理したものがおすすめです。無理なく栄養を取ることができます。
ただし、アワビ1食分(70g)には、1日の推奨量の約19%に相当するコレステロールが含まれています。すでに脂質異常症がある人やコレステロールの管理が必要な人は、食べる量を適度に調整しましょう。
4. ドジョウ汁
どのような効果がある?
ドジョウ汁の主材料であるドジョウは、良質なたんぱく質とカルシウムが豊富な代表的なスタミナ食材です。
ドジョウのカルシウム含有量は100gあたり約736mgで、カルシウムが豊富なことで知られる煮干しよりも約50%多く含まれています。
ドジョウ汁1杯には、牛乳2杯分に相当するカルシウムが含まれるとされ、骨の健康維持や骨粗しょう症の予防に役立ちます。
また、EPAやDHAなどの不飽和脂肪酸も豊富です。血管内のコレステロールを下げ、高血圧や動脈硬化などの生活習慣病の予防に寄与します。ビタミンB1は体内で炭水化物をエネルギーに変えるのを助け、夏の暑さで疲れた体に活力を与えてくれます。
ドジョウの脂質含有量は100gあたり約2.8gと鶏肉より低めです。夏に食欲が落ちたときでも、無理なくたんぱく質を補える料理といえます。
どう取り入れるとよい?
ドジョウ汁はもともと、晩夏から初秋にかけてドジョウが最も丸々と太る時期に食べられていた料理です。しかし現在は養殖技術の発達により、四季を通じて楽しめます。
山椒を少し添えると、独特のピリッとした香りが消化を助け、魚特有の臭みを抑えてくれます。他のスタミナ料理に比べてカロリーが低めなので、ダイエット中の人や脂っこい料理が苦手な人にも、比較的取り入れやすい選択肢です。
5. コングクス
どのような効果がある?
「畑の牛肉」と呼ばれる大豆は、約40%がたんぱく質でできた代表的な植物性たんぱく質食品です。
カルシウム、鉄、マグネシウムなどの微量栄養素も豊富で、体力の補充や疲労回復に役立ちます。特に大豆に含まれるイソフラボンは、抗がん作用があるとされます。また、レシチンと食物繊維はコレステロール値を下げ、高血圧や動脈硬化の予防に寄与します。
大豆をゆでてつくる豆乳状のスープは、原料の大豆より栄養が豊富です。これは、大豆に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンが、ゆでる過程でむしろ増えるためです。
熱い料理が重く感じられる盛夏には、コングクスは涼しく食べられるうえ、しっかりたんぱく質も取れる料理としておすすめです。
どう取り入れるとよい?
コングクスはたんぱく質の補給には適していますが、食物繊維やビタミンCは比較的少ない料理です。補うには、きゅうりやトマト、ゆで卵を添えるとよいでしょう。
きゅうりは水分を約95%含み、体温調節や水分補給に役立ちます。トマトに含まれるリコピンは活性酸素を減らし、血管の損傷を抑えるのに寄与します。
ゆで卵は、大豆に不足しがちな必須アミノ酸のメチオニンを補える、相性のよい組み合わせです。ただし、コングクスは韓国食品医薬品安全処が食中毒のリスクが高い食品群に分類するほど常温で傷みやすいため、調理後はすぐに食べ、常温で2時間以上放置しないよう注意してください。
5つのスタミナ料理に共通する目的
サムゲタン、うなぎ、アワビ、ドジョウ汁、コングクスは、食材も調理法もそれぞれ異なります。しかし、夏の汗で失われた水分や電解質、そして食欲低下によって不足しやすいたんぱく質やビタミンを集中的に補うという共通の目的があります。
ただし、これらのスタミナ料理は全体的にカロリーが低くありません。毎日のように食べるよりも、伏日のように特に体が疲れていると感じるときの特別な一食として取り入れるほうが、バランスのよい方法です。
結局のところ最も大切なのは、料理の種類や温度よりも、夏の間を通してたんぱく質、水分、電解質を継続的に取る食習慣そのものです。
スタミナ料理1杯だけに頼るのではなく、普段の食事でも少しずつ栄養バランスを意識することが、暑さを健康的に乗り切るための根本的な方法です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 夏は必ず熱い料理を食べるべき? 冷たい料理ではだめ?
熱い料理だけにこだわる必要はありません。熱い料理には発汗を促して一時的に体温を下げ、食欲を高める効果があります。一方、コングクスのように冷たくてもたんぱく質が豊富な料理も、十分に優れたスタミナ食になります。大切なのは料理の温度ではなく、夏に不足しやすいたんぱく質や水分、電解質をしっかり補うことです。
Q2. サムゲタン、うなぎ、アワビのうち、コレステロールが気になる人はどれを避けるべき?
アワビは低脂肪・高たんぱくの食品ですが、1食分に1日の推奨量の約19%に相当するコレステロールが含まれています。すでに脂質異常症がある場合は、食べる量を調整するとよいでしょう。一方、うなぎやドジョウ汁はオメガ3系の不飽和脂肪酸が豊富で、むしろコレステロールの管理に役立つ場合があります。ただし、どのスタミナ料理も調理法によってカロリーや脂質量が大きく変わります。揚げ物やたれ焼きよりも、蒸し物や焼き物、白湯煮のようにあっさり食べるのがおすすめです。
Q3. スタミナ料理はどのくらいの頻度で食べるとよい?
サムゲタンやうなぎの蒲焼きなどは、カロリーが決して低くありません。毎日食べるよりも、伏日のように特に体力を補いたい時期に集中して食べるほうが現実的です。その代わり、普段の食事でもたんぱく質と水分を継続的に取る習慣を身につけることが、夏の体力管理にはより根本的に役立ちます。
Q4. 初めてドジョウ汁を食べますが、独特の臭みが心配です。抑える方法はありますか?
ドジョウ汁に山椒を少し加えると、独特のピリッとした香りが臭みを抑えるのに役立ちます。ドジョウを骨ごとすりつぶして煮込む南原式のドジョウ汁は、比較的なめらかな食感で、たんぱく質やカルシウムの消化・吸収率も高いとされています。初めて食べる場合は、こうしたタイプから試してみるのもよいでしょう。
Q5. 大豆アレルギーの人がコングクスの代わりに食べられる夏のスタミナ料理は?
大豆アレルギーがある場合は、コングクスの代わりにドジョウ汁やサムゲタンなど、動物性たんぱく質を中心としたスタミナ料理を選ぶと安全です。どちらも夏に不足しやすいたんぱく質やミネラルの補給に適しています。コングクスのような涼しさを求めるなら、そばや冷麺にゆで卵ときゅうりを添え、たんぱく質と水分を一緒に取るのもよい代替案です。