働く人を悩ませる慢性症状5つ――原因から改善策まで

朝の通勤途中、体が以前とは違うと感じる瞬間があります。
首がこわばり、手首がズキズキし、目が乾き、腰が切れそうに痛み、昼食を取ると胃腸の調子が悪くなる。そんな日々です。
こうした症状は、ある日突然現れたものではありません。1日8時間以上、同じ姿勢でモニターを見ながらキーボードを打ち続ける生活が、何カ月、何年も積み重なった結果なのです。
医療分野を分析する立場から見ると、この5つの病気は一見、無関係に思えるかもしれません。しかし実際には、ひとつの根から枝分かれしたものです。
長時間にわたる同じ姿勢、繰り返しの動作、慢性的なストレスという共通の原因が、首や手首、目、腰、腸など、体全体に影響を及ぼしているのです。
今回は、働く人に特に多い慢性症状である、ストレートネック症候群、手根管症候群、ドライアイ(VDT症候群)、腰椎椎間板ヘルニア(腰痛)、過敏性腸症候群(IBS)について、なぜ起こるのか、どのようなサインが現れるのか、そして何ができるのかをひとつずつ具体的に整理していきます。
1. ストレートネック症候群(スマホ首)
原因
健康な首の骨(頸椎)は、横から見ると緩やかなC字カーブを描いています。しかし、目の高さより低い位置にあるパソコンのモニターを、長時間同じ姿勢で見下ろす習慣が、ストレートネック症候群の最大の原因です。
最初はモニターをまっすぐ見ていても、時間がたつにつれて少しずつ頭が下がり、首が前に突き出た姿勢が定着していきます。
実際、ストレートネック症候群は年間220万人以上が受診するほど一般的な症状で、健康保険の統計によると、患者数は毎年増え続けています。
症状
頭が前に出た姿勢が続くと、頸椎の椎間板にかかる圧力が増し、首の後ろや肩の痛みを引き起こします。
筋肉の緊張が長引くと、筋膜性疼痛症候群へと進み、正しい姿勢を取っても痛みが消えない状態になることがあります。
また、後頭部の下を通る神経が圧迫されて頭痛が起こることもあり、その痛みが睡眠を妨げ、慢性的な疲労につながるケースも少なくありません。朝起きたときに首がこわばり、動かしにくい場合は注意が必要です。
治療と改善策
幸い、ストレートネックは生活習慣の見直しや理学療法、徒手療法によって十分に改善が期待できる症状です。
ただし、姿勢が完全に改善するまでには、通常3カ月以上にわたる継続的なケアが必要です。
薬物療法やストレッチ、筋力トレーニング、徒手療法を組み合わせ、急性期にはアイシング、その後は温めるケアが役立ちます。
予防のためには、普段から肩を開き、首を立て、背筋を伸ばした姿勢を保つことが大切です。うつむいたまま長時間画面を見ない、視線を水平に保つ、正しい姿勢でも1時間ごとに首をストレッチすることが勧められます。
放置すると首の骨の間にある椎間板に問題が生じ、老化が早まる可能性があります。重症化すれば脊髄神経を圧迫し、手術が必要になることもあるため、早期のケアが重要です。

2. 手根管症候群(手首のトンネル症候群)
原因
手首には神経や腱が通る狭いトンネル状の通路、手根管があります。ここを通る正中神経が圧迫されると、手根管症候群が起こります。
長時間パソコンを使う事務職をはじめ、美容師や料理人、主婦など、手をよく使う職業で発症しやすい傾向があります。キーボードやマウスを一日中使う会社員、スマートフォンを長時間手にしている人にもよく見られます。
特に女性は男性より手根管そのものが狭く、発症しやすいとされています。また、腎不全や甲状腺疾患、関節リウマチなどの全身疾患がある場合も、発症リスクが高まります。
症状
代表的な症状は、親指、人差し指、中指、薬指の半分に生じる感覚異常やしびれ、感覚の鈍さ、痛みです。
肩の痛みを断続的に訴える人もいます。症状が進むと手に力が入りにくくなり、物をつかむのが難しくなる運動麻痺が現れることもあります。
問題は、初期には症状が軽く、見過ごしやすいことです。
放置すると、夜中に痛みで目が覚めたり、日常生活に支障が出たりするほど悪化する可能性があります。
治療と改善策
初期であれば、保存療法でも十分な改善が期待できます。
手首の使用を減らすだけでも症状の改善に役立ちます。温めるケアやマッサージ、ストレッチも有効です。
ただし、こうした方法は一時的な緩和にとどまることもあります。症状が出始めた段階で受診し、正中神経が圧迫されている原因を調べ、手根管内の圧力を下げる根本的な治療を始めるのが望ましいでしょう。
症状が軽く、筋肉の萎縮がない場合は、消炎鎮痛薬などの薬物療法、サポーターや副木による固定、手根管内へのステロイド注射がまず試されます。
保存療法で改善しない場合は、正中神経を圧迫している靱帯を切開する手術を検討します。手術は通常30分以内に終わり、近年ではごく小さな切開で行えるようになっています。
予防のためには、1時間に1度は手首をほぐし、リストレストを使うこと。また、マウスやキーボードは手首が反り返らない高さに設置するとよいでしょう。
3. ドライアイ(VDT症候群の代表的な症状)
原因
VDT症候群とは、長時間モニターを見ながらキーボードを打つ作業によって生じる、さまざまな身体的・精神的な不調を指します。職場の設計、椅子、モニター、キーボードなどの設備要因、年齢や体格などの労働者側の要因、照明・湿度・温度などの環境要因、作業姿勢や作業時間などが複合的に影響します。
私自身、ゲームに集中しているときに、このドライアイが特にひどくなるのを感じました。
ドライアイは、涙の量が不足したり、涙がすぐに蒸発したりすることで起こる病気です。涙が乾くと、目は外部からの刺激によって傷つきやすくなります。
モニターを長時間見つめていると、自然にまばたきの回数が減ります。これが涙の膜を薄くする大きな要因です。
症状
目が疲れやすい、頻繁に充血する、光や刺激に敏感になる、目に砂が入ったような異物感があるといった症状があれば、VDT症候群、特にドライアイが疑われます。
目がしみたり乾いたりする刺激が続き、重症になると頭痛を伴うこともあります。
長期的にパソコンを使う人の約20%がこうした症状を経験するとされ、目の疲れだけでなく、頭痛、いら立ち、緊張感、無気力感などの自律神経症状を伴う場合もあります。
治療と改善策
パソコン画面を目より低い位置に置くと、目が外気にさらされる面積を減らせます。意識的にまばたきを増やし、涙の膜を補うことも有効です。
症状が続く場合は、医師の処方を受けて人工涙液を使うのもよい方法です。
また、室内の湿度を適切に保ち、乾燥しすぎないようにしましょう。作業中は15~20分ごとに休憩を取ると、目の疲れの軽減に役立ちます。
目が乾いたときに、無意識にこする癖は絶対に避けてください。ドライアイの状態で目をこすると角膜上皮を傷つけるおそれがあり、角膜炎や結膜炎などの炎症につながる可能性があるためです。
20分ごとに、20フィート、約6メートル離れた場所を20秒間見る、いわゆる「20-20-20ルール」も実践しやすい習慣のひとつです。
4. 腰椎椎間板ヘルニア(腰痛)と慢性腰痛
原因
かつては重い物を持つ肉体労働者の病気と考えられていた腰椎椎間板ヘルニアですが、現在では長時間の座り仕事や悪い姿勢が日常化している会社員の間でも増えている、代表的な職業病となっています。
悪い姿勢や外傷、過体重などさまざまな要因が重なり、傷んだ椎間板が脊椎の外へ飛び出したり、神経根を圧迫したりするのが腰椎椎間板ヘルニアです。
特に、腰を丸めたり、頭を下げたりする姿勢が長く続くと、脊椎周辺の筋肉や靱帯が弱まり、椎間板への負担が蓄積します。こうした変化が一時的な疲労感や筋肉痛と間違われやすい点が問題です。
症状
椎間板の内部にある髄核が飛び出して神経根を圧迫すると、腰痛に加えて、尻や太もも、ふくらはぎ、足先にかけて引きつるような痛みやしびれが生じます。
腰椎椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛は、腰をまっすぐ伸ばしてじっと立っていても脚がしびれるのが特徴です。歩いたり動いたりしたときだけ症状が出る血管性の病気とは、この点で区別できます。
専門家は、腰痛を繰り返したり、姿勢を変えるたびに違和感が続いたりする場合、単なる筋肉疲労ではなく、脊椎疾患の初期サインかもしれないと注意を促しています。
治療と改善策
幸い、腰痛の多くは、一定期間の休養や理学療法、薬物療法などの保存療法、注射治療によって改善します。
ただし、痛みが2週間以上続く場合や、感覚の低下、ふらつき、力が入らない、震えなどの運動神経麻痺の症状を伴う場合は、X線やMRIなどによる専門的な検査を受ける必要があります。
一般的には、発症から4~6週間たっても痛みが強い場合や、足首が上がらない下垂足などの症状がある場合に、手術を検討します。
予防には、1時間ごとに立って歩く、座るときは腰当てを使う、モニターを目の高さに合わせて上体が前に傾かないようにする、プランクやブリッジなど体幹を鍛える軽い運動を続けることが実践的です。
私の場合は、椎間板ヘルニアの手術を受け、半年間休職しなければならないほどつらい時期を過ごしました。

5. 過敏性腸症候群(IBS)――ストレスが引き起こす消化器症状
原因
過敏性腸症候群は、主に症状に基づいて診断されます。ほかの重大な腸疾患を除外するため、大腸内視鏡検査などが必要になることもあります。
原因はまだはっきり解明されていません。しかし、IBSのある人の消化管は刺激に敏感で、ほかの人なら気にならない腸内ガスや収縮にも強い不快感を覚えやすい傾向があります。
働く人の間で過敏性腸症候群が増えている背景には、過重労働やストレス、頻繁な残業、不規則な食生活などが複合的に関係していると分析されています。
特定の食品を食べたときや、ストレスを感じたときに症状が悪化しやすいのも特徴です。
症状
下痢に加えて腹痛、頻繁なげっぷ、頭痛、不眠、肩こりなど、さまざまな症状が同時に現れることがあります。多くの会社員が単なる消化不良や性格の繊細さのせいだと思い込み、放置しがちです。
重要なのは、50歳を過ぎて初めて症状が出た場合、血便や体重減少、貧血を伴う場合、または大腸がんや炎症性腸疾患の家族歴がある場合には、ほかの器質的疾患がないか必ず確認することです。
治療と改善策
治療では、食事の見直しやストレス管理、薬物療法を、症状に合わせて行います。食事面では、腸内で発酵しやすいオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールの摂取を制限する低FODMAP食が症状の改善に役立つ場合があります。高脂肪食品やたばこ、コーヒーなどを控えることも勧められます。
何よりも、自分にとって大きなストレス要因を把握し、それを減らせるよう生活パターンを見直すことが先決です。適度な休息と運動も重要で、特に歩行は腸の動きを活発にする効果が高いとされています。
症状が強い場合は、腸の動きを調整する薬や止瀉薬、便秘薬、プロバイオティクスを使い、必要に応じて鎮静薬や抗うつ薬を併用することもあります。
認知行動療法や催眠療法など、心理面からのアプローチが役立つ場合もあります。症状を繰り返すなら、消化器内科に相談するとともに、ストレス管理にも取り組むのが現実的な解決策です。
5つの症状に共通するひとつの背景
ここまで読めば、もうお気づきでしょう。
ストレートネックも、手根管症候群も、ドライアイも、腰椎椎間板ヘルニアも、さらには過敏性腸症候群まで、長時間座り、同じ姿勢で、ストレスを抱えながら働く生活から生まれた症状なのです。
そのため、5つの症状それぞれに対する治療も大切ですが、より根本的な対策は、日中に姿勢をこまめに変え、定期的に体を動かし、自分なりのストレス解消法を見つけることです。
ひとつ症状が現れたら、それだけの問題だと考えるのではなく、体全体が「今の働き方を変えてほしい」と送っているサインだと受け止めるとよいでしょう。痛みや不調を我慢して放置するより、早い段階で姿勢を見直し、必要なら専門医の診察を受けるほうが、長い目で見れば少ない費用と時間で健康を守ることにつながります。
よくある質問(FAQ)
Q1. ストレートネックや腰椎椎間板ヘルニアは、ストレッチだけで完全に治せますか?
初期の軽い段階であれば、ストレッチと姿勢の改善だけでもかなりの回復が期待できます。ただし、ストレートネックは姿勢が完全に改善するまで通常3カ月以上の継続的なケアが必要です。痛みが2週間以上続く場合や、しびれ、麻痺などの神経症状を伴う場合は、セルフケアだけでは不十分な可能性があるため、整形外科や脳神経外科を受診するのが安全です。
Q2. 手首がしびれて痛みます。単なる疲労と手根管症候群はどう見分ければよいですか?
単なる筋肉疲労であれば、休めば通常1~2日で改善します。一方、手根管症候群では、親指、人差し指、中指、薬指の半分に感覚異常やしびれ、感覚の鈍さが繰り返し現れるのが特徴です。特に夜間に痛みが強くなり、目が覚めるケースがよくあります。こうした症状が繰り返されるなら、神経検査を受けて正確に診断してもらうとよいでしょう。
Q3. 人工涙液を頻繁に使うと、かえって目に悪いというのは本当ですか?
防腐剤入りの人工涙液を1日に何度も長期間使うと、角膜を刺激する可能性があるという懸念はあります。ただし、医師の指示に従って使用する人工涙液は、ドライアイの改善に役立つ方法として勧められています。使用頻度が高い場合は、防腐剤無添加の製品に替えるか、眼科で自分の状態に合った製品を相談することをおすすめします。
Q4. 過敏性腸症候群は完治する病気ですか?
残念ながら、過敏性腸症候群を完全になくす根本的な治療法はまだありません。症状をコントロールし、和らげる方向で管理していきます。ただし、がんに進行したり、命に関わったりする病気ではないため、過度に不安になる必要はありません。ストレス管理と食生活の見直しだけでも、症状の頻度や強さを十分に減らせます。
Q5. 5つの症状を同時に予防できる、最も効率的な習慣をひとつ挙げるなら?
1時間に1度、最低5分は立ち上がって体を動かすことです。実際、1時間ごとに立ったり軽く歩いたりしながら首や肩をストレッチすることは、ストレートネックやVDT症候群の予防に重要です。また、歩くことは腸の動きを活発にし、過敏性腸症候群の改善にも効果があるとされています。姿勢を変え、目を休ませ、手首をほぐし、腰を伸ばし、歩く。この短いルーティンひとつで、5つの慢性症状すべてに働きかけられる、最も現実的な予防策です。
この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、個人の症状の診断や治療に代わるものではありません。症状が続いたり悪化したりする場合は、必ず専門医に相談してください。