インドと英国、海軍の揚陸艦4隻向けに電気推進システムを共同開発へ
インド海軍と英国は、インド海軍が導入を計画する次世代のドック型揚陸艦(LPD)4隻に搭載する統合電気推進(IFEP)システムの共同開発を進めている。両国はすでに、電気推進システムの設計・開発協力に向けた意向書を締結しており、政府間協定(IGA)によって協力を拡大する案を協議している。
インド国防省によると、両国の国防当局は2024年11月28日、英国ポーツマスで、インド海軍向け電気推進システムの設計・開発に協力する意向書に署名した。その後、両国首脳は2025年10月、海洋向け電気推進システムの開発に関するIGA締結の意向を改めて確認した。
中核戦力として注目される統合電気推進
IFEPは、艦艇の発電機が生み出した電力を推進モーターだけでなく、レーダーや戦闘システム、通信機器など主要な電気装備にも統合的に配分する方式だ。機械式の推進システムとは異なり、発電と推進を柔軟に連携できる点が特徴となる。
この方式は大型艦艇において、推進系とミッション機器の間で電力を効率的に運用できるほか、将来的に高出力センサーや電子機器を追加するうえでも有利だ。騒音や振動を抑える設計も可能で、作戦効率や生存性の向上にもつながる可能性がある。
ただし、IFEPは単にバッテリーで航行する電気船とは異なる。艦艇に搭載したガスタービンやディーゼル発電機などで電力をつくり、電気モーターでプロペラを駆動する、統合型の軍用推進システムに近いものだ。
インド海軍のLPD計画と連動
今回の協力は、インドの造船所で建造される予定のLPD4隻を対象としている。LPDは、兵員や装甲車、上陸用舟艇、ヘリコプターなどを輸送し、沿岸部に展開させる大型の水陸両用艦だ。指揮統制や災害救援、海外在留邦人ならぬ自国民の退避任務にも活用できる。
インド海軍は現在、米国から導入した唯一のLPDであるINSジャラシュワを運用している。次世代LPD計画が実現すれば、インド海軍の上陸作戦能力と外洋輸送能力を拡大する基盤になるとみられる。
英国政府は、自国海軍で電気推進システムを運用してきた経験を生かし、インドとの技術協力を進めている。英国側は、23型フリゲートや45型駆逐艦、クイーン・エリザベス級空母などで培ってきた海洋電気推進に関する経験を、協力の基盤として示してきた。
技術移転以上に重要な試験・統合能力
インドと英国の協力は、推進システムの設計にとどまらず、現地での試験や産業基盤の構築へと発展する可能性が高い。インドメディアの報道によると、英国のGEベルノバとインド国営企業のバーラト・ヘビー・エレクトリカルズ(BHEL)は、統合電気推進システムを検証する陸上試験施設の建設を進めている。
陸上試験施設は、艦艇に装備を搭載する前に、発電機や電力変換装置、推進モーター、制御システムが連動して作動するかを確認する役割を担う。大型軍艦の電気推進システムでは、各装備の統合安定性と電力管理ソフトウエアが性能を左右するため、実際の艦艇建造に先立つ検証が重要になる。
インドにとって今回の計画は、外国製装備を導入するだけでなく、大型艦艇向けの電力・推進技術を国内産業に蓄積する契機となり得る。一方、最終的な成果を上げるには、協定の締結や設計の確定、試験施設の整備、技術移転の範囲と知的財産権の整理など、後続の手続きを円滑に進めなければならない。
インド・英国の防衛協力にとっての試金石
インドと英国による電気推進システムの協力は、両国の防衛関係が完成品の購入を中心とする段階から、共同設計・技術開発を軸とする関係へ移行しつつあることを示す事例だ。両国は電気推進システムに加え、戦闘機エンジンや複合的な武器システムの分野でも協力拡大を模索している。
今後の焦点は、4隻のLPDに実際に適用できる出力と信頼性を確保できるかどうかだ。インド海軍の運用環境に合わせた設計に加え、現地での生産・整備エコシステムまで構築できれば、今回の計画はインド海軍の近代化と両国の防衛産業協力を同時に前進させるプロジェクトとなる可能性がある。
よくある質問(FAQ)
インドと英国が電気推進システムを開発する艦艇は何ですか?
インド海軍が導入を計画する次世代ドック型揚陸艦4隻が対象です。LPDは、兵員や車両、上陸用舟艇、ヘリコプターなどを輸送する大型の水陸両用艦です。
両国の協定はすでに締結されていますか?
両国は2024年11月、電気推進システムの設計・開発協力に向けた意向書に署名しました。現在は、これを具体化する政府間協定の締結を進めています。
統合電気推進(IFEP)とは何ですか?
艦艇の発電機が生み出した電力を、推進モーターだけでなく、レーダーや戦闘システム、通信機器など主要な電気装備にも統合的に供給する推進方式です。
電気推進システムが海軍艦艇に有利な理由は何ですか?
推進系とミッション機器に電力を柔軟に配分でき、大型センサーや電子機器を追加するうえでも有利です。設計次第では騒音や振動を抑え、作戦効率を高めることもできます。
今回の協力はインドの防衛産業にどのような影響を与えますか?
大型艦艇向けの電力管理と推進システムについて、設計・試験・整備の能力をインド国内に蓄積する契機となり得ます。特に陸上試験施設の整備と現地産業との協力が進めば、技術自立の基盤強化に寄与するとみられます。